硫黄製剤でニキビを治す【医師監修】
昔からニキビの治療に使われるお薬に含まれる成分の一つとして、「硫黄」があります。 特に思春期の頃、ニキビのお薬を使ったことのある方の多くが、おそらくこの硫黄を含む製剤を使用したことがあるのではないかと思います。 ここではこの硫黄を含むお薬がニキビに対してどのように作用するのかについて説明します。

皮脂が多めの方におすすめ!?? 硫黄製剤によるニキビ治療について
硫黄製剤ってどんなもの?

硫黄は病院で処方されるローションなどの外用薬に含まれる場合もありますし、薬局などに売られている市販のニキビ治療用クリームなどにも含まれることがあります。
もしお手持ちのニキビ用の外用薬があったら、成分表をみると硫黄、と書かれている場合があるかと思います。
顔や身体に直接つけるものですから、においなども硫黄独特のにおいがしないように配慮されていることがありますので、硫黄成分が含まれていることを知らずに使っている場合もあるかと思います。
硫黄にはどんな効果があるの?
硫黄のニキビに対する治療効果は、実は一つではなく、いくつかの効果が複合的にニキビを改善させると考えられています。
1.皮脂の分泌を抑え乾燥させる
一つ目は比較的すぐに実感される方の多い、皮脂の分泌を抑える効果。同時にその部分の皮膚を局所的に乾燥させる効果もあるので、ジュクジュクした思春期のニキビなどに対しては非常にうれしい効果です。
2.角質をやわらかくする
お肌の角質を柔軟にして、ニキビのもととなる皮脂や皮膚の老廃物、細菌などの複合体である角栓が毛穴に詰まりにくくする効果もあります。
3.アクネ菌を退治してくれる
硫黄にはアクネ菌そのものを退治する作用もあります。
以上のように、多方面からニキビにアプローチしてくれる成分といえます。
ただ、この肌を乾燥させる、という効果が思春期の皮脂がたくさん出た結果としてのニキビ以外に対しては裏目に出る場合もあります。
乾燥ニキビや、ホルモンが主原因のニキビなどいわゆる「大人ニキビ」には多くの原因があり、過剰に皮脂を抑えたり、乾燥をうながしてしまう硫黄製剤による治療は、適さない場合があります。
硫黄製剤で治療をするメリットは?

硫黄製剤は、前述のように皮脂分泌を抑える力、肌を乾燥させてギトギトした感じを抑える作用が強いので、皮脂が分泌されすぎてどうしようもない、10代のニキビの場合には非常に良い効果が期待できる薬剤の一つといえます。また、使用したときのスッキリ感も好ましいものです。
加えて、外用薬による治療なので皮膚科に通院するのは少し大変でも、時間やコストも比較的かかりにくい治療法と言えます。
市販薬にも硫黄成分が含まれているものがありますので、必ず硫黄製剤による治療を行うためには、病院への通院が必要、といったものではなく、手軽に使用できるのも嬉しいですね。
硫黄製剤を使用するうえでの注意点は?
局所の皮膚を乾燥させる、皮脂の分泌をしっかり抑えるというお薬としての硫黄製剤の特性から、思春期ニキビ、あるいは思春期のような皮脂の過剰分泌が明らかに原因であるニキビ以外には使いにくい面があります。
大人ニキビは、お肌のうるおい不足がニキビができる原因の一つになっている場合もありますから、よりお肌を乾燥に傾けてしまう硫黄製剤はかえって悪化させてしまう可能性も否定できません。
まず、ニキビの主原因がなんであるかをできるだけ把握し、硫黄製剤を使うことが適切かどうか、皮膚科で医師に相談してみるとよいでしょう。
また、そのうえで硫黄製剤を用いることになった場合は、やはり多少においがすることもありますし、塗ったときはさほど出なくても時間がたって皮膚の上で水分が蒸発してくるとお肌の表面に粉が白浮きしてしまうことがあるので、特に顔などに塗るときは気を付けたほうが良いでしょう。
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医師監修
アクネクリニック 新宿院院長
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- 経歴
- 2012年3月 北里大学医学部医学科 卒業
2012年4月 北里大学病院 勤務
その後、都内クリニックで研鑽を積む
2020年2月 アクネクリニック新宿院 院⻑となる

硫黄製剤の使用には日本でも長い歴史があり、利点も欠点も比較的よく知られているという点で、何となく安心感のあるニキビ治療の一つではあります。 しかし最近では色々と効果の高いニキビ治療薬が開発され、認可されて使用されるようになったこと、皮膚を乾燥させてしまう効果が大人ニキビに適さないこともあって、以前に比べると使用されることが少なくなってきています。 今はニキビ治療にもたくさんの選択肢がありますし、硫黄製剤にももちろん独自の利点がありますので、よく見極めて使用するようにしたいですね。